ローカルSEOの備忘録

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口コミのポリシー違反によるGoogleビジネスプロフィールの制限のヘルプと再審査請求フォームが公開

2024年7月下旬に、口コミのポリシー違反によるGoogleビジネスプロフィールの制限のヘルプページが公開されました。

ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限 - Google ビジネス プロフィール ヘルプ

ビジネスオーナーが虚偽のエンゲージメントに関するポリシーに違反していると判断された場合、違反しているクチコミの削除に加えて、Googleビジネスプロフィールにも制限が課されることがあります。

これまで虚偽のエンゲージメントの違反口コミへの対処は、大きく2つありました。

  1. 違反口コミの削除・非表示
  2. ビジネスプロフィールの停止

この1と2の間になるのが、今回の制限措置となりそうです。

虚偽のエンゲージメントと3種類の制限について

虚偽のエンゲージメントとは、「実体験に基づいていないコンテンツ」とされています。

販売者が次の行為を行うことは許可されません。

  • 実体験に基づいていないコンテンツの投稿を募ったり促したりする行為。
  • レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。
  • 顧客からの否定的なクチコミの投稿を妨げたり禁止したり、肯定的なクチコミを選択的に募ったりする行為。
  • 競合他社のお店や場所について、その企業や商品の評判を傷つけるコンテンツを投稿する行為。

禁止および制限されているコンテンツ - マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー ヘルプ

具体的には、やらせや投稿代行による口コミ、特典や割引などのインセンティブでの口コミの獲得、レビューゲーティング(否定的な口コミの投稿を妨げ肯定的な口コミだけを誘導するような行為)、競合他社への嫌がらせの口コミなどがポリシー違反に該当します。

今回、最初の一文にて「Google は、事業者に関する虚偽の、あるいは報酬に基づくクチコミと評価を重く受け止めています」とあることから、特に「虚偽の口コミと特典による口コミ獲得」に焦点が当てられていると考えられます。

 

これらのポリシー違反があったと判断された場合、3種類の制限が課せられるリスクがあります。

  1. 一定期間、ビジネス プロフィールで新しいクチコミや評価を受け取ることができなくなる
  2. 一定期間、ビジネス プロフィールの既存のクチコミや評価が非公開になる
  3. 虚偽のクチコミが削除されたことを消費者に知らせる警告がビジネス プロフィールに表示される

プロフィールに制限を適用する予定がある場合は、ビジネスオーナーにメールで通知されるとのことです。

制限1. 新しいクチコミや評価を受け取ることができなくなる

「新しいクチコミや評価を受け取ることができなくなる」とは、「口コミを投稿」をクリックすると、「投稿は現在無効になっています」という画像が出て、口コミが投稿できなくなる制限のことかと思われます。

画像

この無効状態は、2023年12月に発見されました。

一定期間、新しい口コミを収集できなくなることで、集客力が今後低下するリスクがあります。

制限2. 既存のクチコミや評価が非公開になる

「既存のクチコミや評価が非公開になる」状態は、炎上店舗などに見られる「口コミがすべて非表示なる」状態のことかと思われます。これも2023年以前から確認できています。

過去の口コミが非公開になることで、集客力の低下のリスクがあります。

制限3. 虚偽のクチコミが削除されたことを消費者に知らせる警告

最後の「虚偽のクチコミが削除されたことを消費者に知らせる警告」は、海外のフォーラムで質問したところ、以下の事例を共有いただきました。

https://localsearchforum.com/threads/have-you-ever-seen-display-a-warning-to-let-consumers-know-that-fake-reviews-were-removed.61855/#post-195054

「虚偽の疑いのあるレビューがこの場所から最近削除されました」という表示が、ビジネス説明の上部あたりに掲載されるようです。

口コミが削除されることで、集客力が低下するだけでなく、ユーザーに対しても不審なイメージを与えることになります。

関連する情報が2024年7月にGoogleマップのヘルプ「消費者アラート」にて公開されています。

そこでは「不審なクチコミが削除されたことを知らせるバナーがビジネスのページに表示されます」と書かれています。

消費者アラート - マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー ヘルプ

制限が課せられてしまったら再審査請求が必要

これらの制限が課せられた店舗は、再審査請求をして承認されると、制限が解除されるそうです。

事業者は、Google の決定に対して再審査を請求できます。請求が送信されると、Google はビジネス プロフィールと、再審査請求に際し事業者から提供された追加情報を再審査します。制限を解除するかどうかを判断し次第、審査の状況をお知らせします。
ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限 - Google ビジネス プロフィール ヘルプ

現在、再審査請求フォームは英語のみの対応です。

Submit Your Business Profile for Review - Google Business Profile Help

入力項目は

  1. 申請者名
  2. 管理に使っているメールアドレス
  3. ビジネスプロフィールID
  4. 社名
  5. 虚偽のエンゲージメントに違反していないと考える理由
  6. 再審査請求を評価するための書類(任意)

の6つになっています。

フォームを日本語訳したものがこちらの画像です。

この理由と書類で何を提出すべきかの判断が難しいです。実際の店頭の様子や来店の様子を主張することになるでしょうか。

口コミのポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限で何が変わったのか

1. 再審査請求フォームの登場

口コミの制限自体は、以前からGoogleマップの仕様として導入されているものでした。

投稿の無効化や非表示は2023年時点から確認できており、不審なクチコミの削除バナーも2024年7月時点でGoogleマップの消費者アラートのページで紹介されています。

ただ、投稿無効化になっても、これまでは解決する手段・相談する窓口がありませんでした。

Googleビジネスプロフィールのサポートに相談しても「それはGoogleマップの問題なので、ビジネスプロフィールのサポートしては対応できない」と断られてしまいます。実際に投稿の無効化になった地点の場合、再投稿できるまでに3ヶ月以上かかっていました。

その問題の解決窓口として、はじめて再審査請求フォームが設置されたというわけです。

2. ビジネスプロフィールのサイトでのヘルプページの全世界公開

ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限のヘルプページは、実はイギリス限定で以前から公開されていました。

以前の様子。ページの内容は日本からは閲覧できない状態でした

そのページが遅くとも2024年7月28日*1時点で(英国のみ)が外れ、日本をはじめ全世界でも公開されました。

イギリスでのテストを終え、本番実装されたと考えられます。

9月14日に、海外のプロダクトエキスパートであるTim氏がこのページの更新を発見し、多くの人が更新を知りました。

これまで口コミの制限・消費者アラートの情報は、Googleマップユーザー向けのサイトでしか公開されてきませんでしたが、今回初めてGoogleビジネスプロフィールのユーザー向けのサイトで情報が公開されました。

口コミの問題対処が「Googleマップの仕様」から「Googleビジネスプロフィールへの制限措置」として明言されたとも言えます。

今後、虚偽・報酬による口コミによるビジネスオーナー向けの制限が本格化していくことが予想されます。

虚偽のエンゲージメントによるポリシー違反の口コミの現状と問題点

現状、「クチコミ投稿でトッピング無料」というような報酬によるクチコミ獲得をかなり多くの店舗がやっています。クラウドソーシングなどでは、口コミ投稿代行の案件が登録されています。

アンケートを事前にはさんで高評価のユーザーだけをGoogleマップの口コミに誘導するレビューゲーティングを強みにしたツールも増えています。

今回のアップデートにより、こういった施策のリスクが一層高まりました。

これまで虚偽のエンゲージメントの違反口コミへの対処は、大きく2つありました。

  1. 違反口コミの削除・非表示
  2. ビジネスプロフィールの停止

この1と2の間に入ってくるのが、今回の制限措置となるでしょう。

違反口コミは「やったもの勝ち」になってしまっている面が残念ながらありました。「削除されますよ」と言われても「表示されたらラッキー」と考えてしまう方も少なくありませんでした。

今後、この中間措置が導入されることで、制限を受ける店舗が急増する可能性があります。

今回のアップデートで特にターゲットにされているのは、虚偽の口コミと報酬の口コミです。特に、後者は残念ながらかなり一般的に広まってしまっている手法ですが、そこに段階的にメスを入れる第一歩だと考えられます。

Googleのヘルプの第一文に「Google は、事業者に関する虚偽の、あるいは報酬に基づくクチコミと評価を重く受け止めています(That’s why we take fake and/or incentivized reviews and ratings on businesses very seriously)」とありますが、「報酬」の問題を第一に書かれたのは初見です。

「Google のクチコミの仕組みについて」では、報酬による口コミは触れられていませんでした。

またヘルプページの原文では「very seriously」となっており、「非常に深刻な問題への対処」と受け取ることができます。

実態と違う高評価口コミの問題点

ガイドライン以前に「実態と違う高評価口コミ」は、短期的には集客につながっても、中期的には狭い地域内での評判を落とし、正しい期待値での集客がいつまでもできなくなる問題もあります。

日本人はもともと「100点でも星4点」という傾向がありますが、「スタッフに見せる必要がある」報酬による口コミだと、忖度によって星5点がつきやすい傾向があります。

Googleの口コミの暗い未来と可能性:これからのGoogleマイビジネスの話をしよう#3|Shoichi Hasegawa

そうなると、普通つかないような高評価スコアになり、実態とかけ離れた期待値での集客になってしまいがちです。

結果、「評価が高かったから行ってみたけど、全然良くなかった」「口コミが参考にならなかった。サクラでは?」という星1の評価がつきやすくなります。事前の期待値の高さが、かえって極端な低評価の口コミを招いてしまうわけです。星5と星1の口コミが共存する歪な地点になるケースが多いです。

また、集客力の弱さの問題もあります。

報酬による口コミ獲得をしている店舗を分析してみると、「100字未満・抽象的なコメント・写真なし・星5点」という口コミばかりが並びます。

口コミは点数だけでなくコメントを情報源とするユーザーも多いので、こういった口コミばかりだけだと、集客の効果は最大限には発揮できません。また、そういった口コミが並んでいると、口コミに慣れたユーザーから見抜かれることが増えてきます。

口コミは「体験の結果」であり、それ自体を「手段」とするのは、個人的にはおすすめしていません。問題点を書かれたり、口コミが自然に生まれないようなら、分かりやすい解決手段ではなく、その問題そのものに向き合うべきです。

それが長期的な商売繁盛につながっていくのを、これまでも数多く見てきました。

今回のアップデートを機に、実際のお客さんからのフィードバックに向き合い、サービスの改善や返信での情報提供に向き合う店舗が増えることを願っています。

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*1:過去のソースコードを比較できるAhrefsのページインスペクション機能では7月11日以前は「UK only」となっており、7月28日以降のデータから現在のページに更新されている